2017年7月30日日曜日

連載:Homo Deusってこんな本⑧【完】

はじめましての方へ💁


こんばんは!
めぐぺ。です。


6月からスタートしたビル・ゲイツおススメ本のひとつ『Homo Deus』、とうとう読破しましたヽ(=´▽`=)ノ!!!


普段読まないジャンルだったせいもあってか、途中ちょっと飽きてしまったりもしましたが無事読み終えました。

歴史の振り返りや、人類と動物との比較、人類の中の主義による比較、人類とAIとの比較などについて様々な考察や実験を通して書かれていたこの本。文章の難易度はそれほど高くないものの、普段自分が意識したことがない事象を英語で読み、理解する作業。読むたびに脳内がフル回転しているのを感じていました。サスペンスを読んでいる時は、こうはならない。慣れたものだけでなく、時に新しいチャレンジをすることはとても大切ですね。


今回は、前回に続いて、PARTⅢ Homo Sapiens Lose Controの中の 9 The Great Decoupling 中盤から、10 The Ocean of Consciousness、11 The Data Religionまで。ゴールが見えてきたので、ただひたすら読了を目指して進みました。


●前回までのお話はこちら
連載:Homo Deusってこんな本①
連載:Homo Deusってこんな本②
連載:Homo Deusってこんな本③
連載:Homo Deusってこんな本④
連載:Homo Deusってこんな本⑤
連載:Homo Deusってこんな本⑥
連載:Homo Deusってこんな本⑦

●動画はこちら
#217 ビル・ゲイツおすすめのあの本、読んでみた!


今回の内容には、Googleが登場するところも。病気の兆候が現れた時にどのように発見するのか?普通の人は、しばらく様子を見てから病院に行きますよね。でも、そこで結果が出るまでにはかなり時間がかかる。でも、Googleに普段のメールのやり取り含め、健康情報もアクセスできるようにすれば、メールの内容からでも病気の兆候を察知することは可能、なんだとか。

少なくとも、2008年にGoogle検索をモニターすることで伝染病の発症を追跡する、Google Flu Trendというサービスがスタートしているんだそう。知りませんでした。現状はプライバシーの問題で、追跡できるのは検索ワードだけで、個人のメールの中身までは追跡できないようですが。。。

自分自身より自分のことを知っているシステムの存在は、「あり」でしょうか?それとも「なし」でしょうか?確かに、将来発症の可能性がある病気については正確であればあるほどありがたいですが、自分が決めたいと思っていることでも、それまでの心拍数や体の動きなどのデータを蓄積、分析して「あなたにはこっちの方があっている」と毎回言われるとしたら。自分のようで、自分ではない別の誰かがいるような感覚かもしれません。私個人としては、少し不便なくらいの方が人間らしいと思っているので、全てをデータで処理されるのには抵抗を感じます。


その他、最後の章には何度もDataismという言葉が出てきます。辞書にはない言葉なのですが、それほど現代社会ではデータの存在が大きく、常にデータで処理される、データに支配されているといったところでしょうか。それに対して、Dataismを信仰する人間は、Dataistとしています。

"Dataists believes that experiences are valueless if they are not shared, and that we need not - indeed cannot- find meaning within ourselves. We need only record and connect our experiences to the great dataflow, and the algorithms will discover their meanings and tell us what to do. "

データイストは経験は共有されなければ価値がないと信じている。そしてまた、私達には自分達自身に意味を見つける必要はない(というか本当にできない)ということも。私達はただ経験を記録して、巨大なデータフローに繋げるだけでいいのだ。そうすればアルゴリズムがその意味を見つけて、私達に何をすべきか教えてくれる。

"Dataism thereby threatens to do to Homo Sapiens what Homo Sapiens has done to all other animals. "

データイズムはそれによって人類が他の全ての動物達にしてきたことを、人類にしようと脅しているのだ。

人類が長年「人類の方が動物達よりも価値がある」と振る舞ってきたということなのですが、かつて人類がそうしてきたように、データイズムが「データの方が人類よりも価値がある」と結論づけようとしているとのことなんですが、いまいちピンときません。


話が前後しますが、前回までに読んだ中でリベラリズム、つまり自由主義に対して3つの脅威があるとされていました。

1. Humans will lose their value completely.2. Humans will still be valuable collectively, but will lose their individual authority and instead be managed by external algorithms.3. Some people will remain both indispensable and indecipherable, but they will constitute a small and privileged elite of upgraded humans. 

1. 人類はその価値を完全に失う
2. 人類はまだ集合としては価値があるが、個人としての権威は失い、代わりに外部のアルゴリズムによって管理されるようになる
3. 何人かの人々はなくてはならない、判読できないままだが、彼らは小さい特権階級のエリートになる


アメリカ映画の設定にありそうな内容ですよね。一部の人達がエリートになる反面、「ほとんどの人達はアップグレードすることはなく、コンピューターアルゴリズムと新しい超人類によって支配されるようになる」とあります。


現時点での世界がそうなのかはわかりませんが、一部の優れた人達が別世界にいるように見えるような気もしなくはありません。世界の8人の億万長者の資産が、世界人口の半分の資産とほぼ同じという話も時折耳にします。

ただ普通にひっそり生きているつもりでも、自分のことを自分で決められない世界。私達が向かっているのはそんな世界なんでしょうか?

"As I have repeatedly emphasized, nobody really know what the job market, the family or the ecology will look like in 2050, or which religions, economic systems and political structures will domain the world. "
何度も繰り返し強調しているように、2050年にどんな仕事市場なのか、家族構成なのか、自然環境なのか、どの宗教が、経済システムが、政治構造が世界を支配しているのか、誰にもわからない。

今から33年後、世界はどうなっているのか?想像することはできても、映画のように未来を見てくることはできませんよね。私達が蓄積してきたデータは、今後どのように世界を動かしていくのでしょうか。


最後に、3つに問いかけを残してこの本は終了します。

1. Are organisms really just algorithms and is life really just data processing?
2. What's more valuable - intelligence or consciousness?
3. What will happen to society, politics and daily life when non-conscious but highly intelligent algorithms know us better than we know ourselves?
1. 生物は本当にただのアルゴリズムなのか?人生はただのデータ処理なのか?
2. もっと価値のあるのは何か- 知識か意識か?
3. 意識はないが、高度に知的なアルゴリズムが、私達が知っているよりも私達のことを知るようになったら、社会、政治、毎日の生活に何が起こるか?


アルゴリズムは、何かをする時の手順と言った意味でプログラミングの話でもよく出てくる言葉ですが、この場合は、様々なデータ蓄積、分析から生まれたものとして捉えておくとわかりやすいでしょうか。

ただなんとなく毎日を生きているだけだと、考える事のないような問いですが、意識しているもの含め、意識しない間にどこかに蓄積されている「データ」に選択する自由を奪われないためにも、一度考えてみてもいいかもしれません。


気になった表現

今回調べたactive wordはこちら。
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今回学んだ単語

decouple/dikʌ́pəl 【動詞】分離する、脱共役させる

chromosome/króʊməsòʊm【名詞】可算名詞(生物) 染色体

oracle/ˈɔːrəkl【名詞】可算名詞  (古代ギリシャの)神託、託宣、神託所、神命、(エルサレム神殿内の)至聖所、(古代ギリシャの)神託を伝える人【語源】ラテン語「話されたこと」の意

prophecy/prάfəsi【名詞】 不可算名詞 予言(能力)、可算名詞 予言

fathom/fˈæðəm 【動詞】 他動詞 (水の)深さを測る、[通例否定文で] (心中を)推測する、見抜く



*weblio英和辞典参照

*active word 本を読む上で重要な単語のこと。反対はpassive wordで、文章を作る上で必要な単語ではあるが、意味がわからなくても他の文章から意味を推測できる単語のこと。詳細はこちら
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ビル・ゲイツ(だったかと思います)が、「本の内容に賛成はしないが読むことはすすめる」と言っていたように、私も完全には受け入れられませんが、読み物としてはチャレンジしてよかったと思っています。普段自分の見ている世界がまだまだ狭いと改めて感じました。

本のタイトルにあるように、人類が神だとは言い切っていませんが、そうなりうる可能性としていろいろな切り口から書かれていて、いつも以上に考えるきっかけになりました。文面そのものもそうですが、中身を理解するためにもかなり頭を使うことになった1冊でした(結構クタクタ)。


ジャンル的に好みがわかれそう

読了したので、本を5段階評価してみました。
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総合評価:★★
レベル:★★★ 中級〜上級
難易度:★★★ 
楽しめる度:★★
おすすめ度:★★

*★★★★★で評価しています。
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何度か書いていますが、文脈自体はそれほど複雑なものではないので、初心者の方でも時間をかければ十分読める本です。専門用語も、気になったものを辞書で引きながら読むことで対応できます。ただ、そこそこ長いのとジャンルの部分でレベルは中級以上をつけました。

楽しめる度は、個人的にワクワク度が少なかったので低め。過去から現在についての歴史学者の作者の視点からの見解が述べられている本なので、そういったジャンルが好きな人であればもう少し高いかもしれません。おすすめ度も楽しめる度と同様、好みがわかれるように感じたので低め評価。ただ、読解力、理解力をつけたいという人には読んでみてもいいかもしれません。また、多読することで自分に合ったジャンルがわかるようになることもあるので、まだあまりペーパーバックを読んだことがないという場合には、話題の本を試してみるのもひとつです。


まとめ                            

いかがでしたか?

今回も、6月から読み続けた『Homo Deus』について紹介しました。無事読了できてホッ。ブログで紹介することを決めていたので、毎回ノートに気になる単語や文章を書き出したり、かみ砕いて理解するためにもう一度読み返したり。本当に脳内フル回転の約2ヶ月となりました。

この夏はチャレンジしてみよう!と思った方はぜひ、チェックしてくださいね。


  


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3 件のコメント:

  1. 西澤めぐ。さん、はじめまして。takken-19と申します。私も図書紹介のブログを最近はじめました。千葉の若手研究者です。
    Homo Deusで検索してヒットしたので来ましたが、読破されたようで素晴らしいと思います。過去のブログも読ませていただければ幸いです。
    Homo Deusをどう訳すか、ということで検索していましたが、意外と出てこなくて、考えておりました。
    やはり単純に「神人」でしょうか?何かご意見があれば、よろしくお願い致します。
    ちなみに河出書房新社から、翻訳本が来年9月に出版されるそうです。邦題は未定と書かれていました。

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    1. takken-19さん、はじめまして。
      コメントありがとうございます!とても嬉しいです。

      どちらからと言うと、サスペンス系のペーパーバックばかり読んでいたのですが、自分の英語力を試す意味でもたまには新しい分野にもチャレンジしてみよう!と選んだのがこちらの本でした。著者が歴史学者ということもあり、思考的また専門的な内容も濃い本のように感じましたが、とにかく必死で読み進めました。

      Homo Deusをどう訳すか、という点で色々と考えてみたのですが、そういう点から意識して本を読んでいる人は少ないかもしれませんね。面白い視点だと思います。おっしゃるように、Homo Sapiensがラテン語でHomo=人、Sapiens=知恵という意味で人間となるということから考えてみると、Homo=人、Deus=神なので、そのまま捉えると「神人」になってしまいそうですが、本の内容自体は「人=神」というよりは、「神に近づいている」的なニュアンスだったとは思うのですが。神人とすると、言葉を短くするのが好きな人には受けそうですが、少し違和感がある気もします。個人的には、、、昨日考えていたのは、漢字で表すとしたら類人猿ならぬ、「類神人(神に似た人という意味で)」とかでしょうか。もしくは「Homo Deus〜神に近づく人類」のように、サブタイトルをつけるほうがしっくり来る気がしました。いかがでしょうか?

      出版社がどのようなタイトルにするか、気になりますね。

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    2. 西澤めぐ。さん、こちらこそ、ご丁寧に返信ありがとうございます!

      私は職業柄、洋書を読むときに、日本語だとどうなるか?を常に考えております(笑)ただ、中々日本語になりにくい英語やラテン語、その他もあるのも事実ですね。その場合、カタカナにしておいて、内容を説明する、という方法も当面ありかと思っております。訳しにくいということは、逆に、もともと日本語にはない概念だということだと思いますし。
      変な話、正反対に日本古来の神様は、日本神話とかを読むと、「人のごとき神」ですね(笑)

      興味深い分析ですね。「類神人」、なるほどな、と思いました。神に類する人、ですね。私は他に候補として、「神のごとき人」はどうか、と考えていました。
      ご指摘のとおり、私も神に近づいていく人類、という点が、著者ハラリさんの一番の主張だと感じます。
      邦題がどのようになるか、楽しみですね♪
      また色々教えてもらえると、嬉しいです!

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